「契約の履行に着手」っていう言葉が売買契約書には書いてありますが、どいうことなのか?
不動産の契約は、“一括決済”と言う“契約と決済を同時に済ませること”もありますが、多くの場合、契約時に手付金のみを支払い、残金を決済日に支払って取引を終了するのが一般的です。
でも契約後、売主または買主から解約を申し出ることもあります。
売買契約書において、手付金は「当事者の一方が契約の履行(※注1)に着手するまでは、買主はその手付金を放棄して、売主はその倍額(※注2)を支払って、契約の解除をすることができる」とする手付け解除の契約内容が一般的です。
※注1…契約が速やかに完了するように実行すること。 |
※注2…受領済の手付金を返還し、かつそれと同じ金額を支払うということ。 |
でも、このような解除権が契約後いつでも使えるということでは、相手方が不測の損害を被ることになりますので、その時期について一定の制限が必要だと考えられています。
その“一定の時期“が、「当事者の一方が契約の履行に着手するまで…」というものです。
不動産の売買契約において“契約の履行”とは、次の行為を行なうことだと考えられています。
売主の行為 | 所有権移転登記の手続
分筆登記の手続(一筆の土地の一部の売買) 確定測量図の作成(実測売買契約) |
買主の行為 | 内金(中間金)の支払
残代金の支払 |
契約解除に伴い相手方が履行の着手している場合は、手付金の放棄や倍返しだけでなく損害金を支払う必要が出てきますので、当然のことながらよく考える必要があります。
勤務先の倒産、急な転勤、家族の病気なども売主には関係がありませんから白紙解約は難しいので、買主は手付金を放棄しなければなりませんし、反対に、売主の立場で同じようなことがあったら、倍返しの対象になります。
(中間金は返ってきますし、返さなければなりません。)
但し、停止条件付契約として、“ローン特約”や“買い替え特約”がある場合は違いますよ。
ローン特約を付けて契約をした場合は、予定していたローンの承認が得られなかった場合や、予定していた金額に足りなかった場合は、白紙解約できますので、手付金は帰ってきます。
ただ、いいかげんな遅滞行為や虚偽の申請行為などにより、約定の時期までに承認が得られなかった場合などは、白紙解約できませんので、契約後すぐに金融機関に融資申し込み手続きをする必要があります。
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