【売買契約前の重要書類について】
特に事業用の不動産を購入しようとする時は、購入しようと思った物件が見つかったら、『守秘義務契約書』(いわゆる、CAという書類)を出すケースが増えています。物件の詳細資料を得る為に、売主に対して、その資料や内容を他の者に口外しないことを約する書類です。
その後、契約にいたる過程で『買付証明書』(購入申込書などとも言う)を提出し、当該物件について購入の意思があることを表明する習慣があります。またそれ以前に、『取り纏め依頼書』(とりまとめいらいしょ)と言う形で、購入希望者が特定物件の売却条件の整理を、仲介業者に書面で依頼することもあります。 (もちろん、『媒介契約書』で購入の意思を示してもよいのですが、事業用物件になると、案外依頼者と仲介業者の信頼関係があることを前提にしている為に、媒介契約を結ばないケースが多いのが実情です。)
売主が買付証明書の条件で承知すれば、『売渡承諾書』を発行し契約内容の詳細を詰めていくことになります。
『買付証明書』『売渡証明書』の段階では、契約は成立したことにはならないと考えることが、一般的にも知られています。(それを逆手に取って無闇に書類を出す人もいるようですが、信義に反しますので、とても困ったものです。)
その後、売主・買主の合意内容を『覚書』や『協定書』を取り交わすことで確認するケースもあります。
ここで注意すべきなのは、『覚書』が目的物件の内容・売買代金を確定し、契約の当事者の意思が契約の成立を認めることが出来ると判断された場合、一方の意思では合意内容を解除出来ず、最悪の場合は損害賠償を求められることもあるということです。
その後、宅建業法で定められた物件説明を、契約締結前に、『重要事項説明書』により宅地建物取引士(注1)が、取引の当事者に書面で行わなくてはなりません。 通常、ここで買主は最終的な意思決定を下した後、『売買契約書』の締結に至ります。
なんと面倒な流れかと、思われる方もいらっしゃるでしょう が、物件内容や権利関係・購入目的・資金の流れなどがハッキリいている場合は、商談は非常にスムーズに進みます。 しかしながら、特に事業用不動産の場合は、売主、買主に色々なクリアにすべき問題があるのが普通です。 その為、商談自体が、時間的・内容的にも手間のかかるケースが多く、依頼された仲介業者とのコミュニケーションが不可欠になってきます。その仲介業者が貴方にとって、最もよきパートナーでないと困ります。 |
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そのような問題を抱える方にとっては、日頃からよき相談相手となる不動産屋さんとの出会いがとても重要なことだと考えます。
【注1】
宅地建物取引業者は、事務所設置の要件として、従業員5名毎に1名以上の専任の取引士を置くことが義務づけられています。 |
【不動産売買:決済時の手続き】
不動産取引を頻繁に経験している人は、プロでなければそうはいないでしょう。 一度や二度取引を経験している人でも、売主やら買主、仲介業者、司法書士、銀行員が一堂に会して次から次に書類が出て来て、「こことここに実印をお願いします。」とか、「これは銀行印で・・・」とか言われて、ほとんど訳の分からないうちに、「それではお金を支払って・・・(または、受け取って・・・)」となり、やっこらさ終了するという具合な感じじゃないですか? 今回はその手続きを、多少なりとも分かりやすいように整理してみます。
例えば1ヶ月前に重要事項説明、契約行為、手付の授受も無事終了。 さて買主の決済金の準備が整ったら、売主・買主は契約書上の約定日に決済取引をすることになります。
売主は仲介業者を通じて買主の段取り具合を教えてもらい、決済時に抵当権の抹消する書類を抵当権者(普通は、金融機関)に依頼します。(目安として決済1~2週間前迄に)
仲介業者(注2)は正式に決済日が決まれば、賃料収入や固定資産税などの日割り精算金の計算をして、売主と買主がそれぞれ幾らの金額を授受するのかを文書で伝えます。
また、通常であれば契約の場所は売主の都合で決める場合(仲介業者の事務所、売主の自宅…)が多いのですが、決済については金額が大きなものであることもあり買主の都合(≒融資する金融機関の都合)で決めるのが普通です。
売主にとってその決済場所が馴染みのない地域や場所であることが多いので、仲介業者は全く土地勘がない売主でもちゃんと時間通りにその場所に迷わず行けるように、住宅地図や目的場所の電話番号をお教えすることが必要です。
※ 実際に売主が時間通りに来なくて、取引が出来なかったということもあります。最悪ですと、違約で契約解除です。 そして、仲介業者は決済金の金種(買主が希望する金額を“振込みなのか、現金なのか、小切手で準備するのか…)について売主・買主に意思の疎通がないようにするのも大切な仕事のひとつです。
※ 受け取る金額が大きくなると、現金では数えるのが大変ですから、小切手は現金の代用物で便利です。でも、帰り道で落としたり、盗まれたりすると一大事です。で、小切手の表側に2本線が引いてある“線引き小切手”が広く使用されています。その線引き小切手は、持ち込まれた銀行が支払を取引先に対して行なうルールですから、万が一の場合でも被害にあった人が銀行を通じて不正にお金を受け取った人を特定できるからです。
また、通常であれば不動産売買は買主の融資を利用します、その際に金融機関が“司法書士”(注3)を紹介することが多いようです。司法書士は、売主と買主の所有権移転手続きを代行する仕事をして、取引を完了させます。
だから、決済時の最も大事な“不動産の所有権移転・変更”の実務は司法書士が行なっているわけで、仲介業者はその周辺作業、金融機関はお金の作業をしているというイメージでいいと思います。
司法書士さんが「登記申請書類は整いました!」と云えば、買主は決済金の支払いをし、売主は領収書を渡します。
※ もっともポピュラーなのが売主の口座に振り込む方法です。これが一番安心ですが、振込みしてから、自分の口座にちゃんと着金しているかどうか確認することが普通だと思います。今更なんて思いますが、着金確認をするのに数十分とか、1時間とか掛かることがありますので、次の用事がある人は一応余裕を持っておいたほうが無難ですよ。 ※ 買主から売主の口座に振り込む場合の手数料は誰が負担するのか?通常は買主が負担している場合が多いけれど、珠に「それは売主が負担すべきだ…とか、小切手作成費用も売主の都合で…」と主張する買主もいます。そこまで云わなくてもとは思いますが、売主・買主が双方納得すればそれはそれでいいことではあります。 また、固定資産税等の精算や賃料収益の精算金の授受もこの段階で行ないます。
前述した金種内訳により支払いますが、買主の出金手続きや売主の着金確認に時間が掛かればこの時点で、ひたすらジッと待つことになります。 その時間を利用して、筆界確認書や確認申請書類の原本や鍵の引渡し、収益物件であれば賃貸借契約書の原本や、管理会社の引継ぎなどをするのもいいでしょう。
売主と買主はそれぞれが司法書士さんに報酬の支払いをして、司法書士さんは登記手続きに法務局へと向かいます。
※ 売主側と、買主側に分かれて双方に司法書士が付く場合もあります。
以上の決済手続きが終われば、最後に仲介業者に対して“仲介手数料の支払い”(注4)をして「お疲れ様でした!」と全てが終了します。
【注2】・・・仲介業者
契約は売主・買主間で行う行為なので、当人同士で締結して何ら問題はありません。 ただ、現実的には余程慣れた方でない限り当事者同士だけで不動産の売買行為を完結させるのは無理があると思います。 当事者が合意している場合、事務処理と立会人としてのポジションで“不動産業者”を仲介人として立てる方法がいいのではないでしょうか。 ちなみに、その場合の報酬(仲介手数料)は当然ながら通常より割安になると思います。 |
【注3】・・・司法書士
司法書士の試験に受験資格は特に無く、中卒でも、未成年者でも、試験に合格することは可能です。試験に合格しても、未成年者である間は司法書士登録をすることはできません。 司法書士の職務内容は、法務局・裁判所(金額制限あり)提出書類、ただし不動産の表示に関する登記は土地家屋調査士が行ないます。 登記費用で大きなものは登録免許税プラス司法書士報酬ですが、税額は物件により異なりますし、司法書士報酬はそれぞれ司法書士により異なります。 |
【注4】・・・仲介手数料の支払い
仲介業者の仕事は契約時で一応終了していると考えられており、仲介手数料も決済時ではなく契約終了時点で請求権があると考えられています。 手数料を契約終了時点で50%、決済終了時に残りの50%を支払うことが多いようですが、これも何か決まったルールがあるわけではありません。 ちなみに私ども『南森町不動産』は、契約時には1円も戴かず、決済時に全額を戴くことにしています。 |
【登記済証(権利書)の紛失している場合】
売買契約(所有権の移転)の後、決済の直前に、売主から「登記済証(=権利書=権利証)が見当たらない」とか、(相続物件などで所有者が複数いる場合など)「誰が持っているのか分からない」とかいうことは間々あることです。
契約の段階で、「権利書は大丈夫ですか?」と聞いている時は、「銀行の貸金庫に置いてあります」とか、「大事な書類は全部まとめて仏壇の引き出しに…」なんて言っていても、いざ探してみると「あれっ!確か…」ってことです。何年ぶりに見ようと思ってみても、人の記憶は案外いい加減なものだと思い知らされます。
平成17年3月7日からの不動産登記法の改正で、「登記済証」は「登記識別情報」(12桁の暗証番号)に替わりましたが、長らく所有している不動産を売買するときは「登記済証」で行うことになります。
勿論、「登記済証」を紛失しても、その権利そのものがなくなるものではないし、権利書だけで売買は出来るものでもありません。
でも、所有者自体の不都合が生じるものですから、大事に保管すべき重要書類なのです。
不動産登記法改正前は、登記を受けたことのある成年者2人(以上)が、保証した「保証書」を添付して登記することになっていました。
改正後は、その保証制度がなくなり、(1)「事前通知制度」(2)「資格者代理人による本人確認制度」(注5)のどちらかで「登記済証」を紛失した人の本人確認することにより登記申請を受け付けることができるようになりました。
手続きが簡単になったことは間違いありません。
【注5】 (1)法務局(登記官)から書留郵便などで申請が本人のものかどうかを確認してくるので、少々時間が掛かる。 (2)資格代理人(登記申請の代理を業とすることができる代理人)が、本人確認できる情報に基づいて申請してきた場合には、(1)の「事前通知制度」の手続きは必要ない。この場合は主に司法書士の先生がその代理人になる場合が多いと思いますが、時間的には早いので主としてこちらを使う方が便利だと思います。
《別に、公証人による本人確認制度もあるが、凡そ(2)と同じ。》 |
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