不動産の売買契約に伴って、すべての必要資金を手持ちの現金で実行する人は殆どいないと思います。
金融機関からの融資を申し込んで、取引をするのが普通です。
元々、事業用不動産の売買では、契約締結に際して、買主の融資がOKであれば購入、NOであれば“白紙解約”か“買主は解除できる”という特約付き契約は珍しいものではありませんでした。
でも、最近は売買契約前の「ローン特約付買い付け証明書」自体を受け取らないケースも珍しくありません。
売主は、ローン特約付売買契約すると数週間から壱月程は、もしその後にいい買主が出てきても乗り換えることはできないし、最終的に買主から「ローン無理でした…」となったら何をしていることか分からないからです。
金融機関の融資の可否は、不動産業取引の“生命線”です。
極論すれば、取引事例や収益還元法なんて現実の取引にとっては教科書の中の話で、需給関係の中で購入希望者が実際に資金調達できるかどうかが最も大きな問題なのです。
■ ローンの具体的内容 ■
市販されている売買契約書を使っている場合は、予めローン特約条項が書いてありますが、そうでないオリジナルの契約書では気をつけないといけないことがあります。
例えば手付金1000万円で売買契約し、決裁時に残金9000万円を支払うことになっている場合、必ずしも90009000万円自体が融資対象金額とは限りません。
ちゃんとした売買契約書では、ローン特約条件に「●●銀行●●支店で借入金額●●万円の融資申込をする」と具体的に書かれているはずです。
買主は売買契約してから、「これからゆっくりと何処の金融機関に申し込むか考えます」ではダメなのです。
買主は売主に対して、速やかに融資の手続き実行する責任がありますし、仮におっとり刀で行動を起こしたとして、期待する融資が受けられない場合は、努力義務違反としてローン特約条項があったとしても(厳密な意味で)解除や失効の主張は出来ないのです。
勿論、買主側の仲介業者は買主の味方でしょうから、ちゃんと危険性を回避するよう契約書を含めて万全の手配をしてくれると思います。
でも、全ての宅建業者が同じ知識や経験を持ち合わせているわけではないので、買主様自身も十分注意して下さい。