不動産ナマ知識/検査済証のない収益物件

建物の“検査済証”と言えば、建築基準法に基づいて申請された“建築確認申請書”の通りに建てられているというお墨付きを表す文書であります。

従来は役所(特定行政庁)だけで発行されていましたが、現在は指定確認検査機関(民間)交付されています。
最近でこそ検査済証の有り無しをうるさく言うのですが、昭和末のバブル期迄は検査済証の有る無しはさほど気にする必要も無かったのですし、金融機関の方も融資審査の要件としてはさほど重要視していなかったと思います。

でも、昨今は融資を受けようとする方ならお分かりだと思いますが、検査済証の無い物件は金融機関の“断り文句”のひとつとなったりすることがあります。検査済証の有無をうるさく言い出した大きな原因は、収益物件の購入者が金融機関の融資申し込みをした際に、その収益物件が違反建築物であると判るとそもそも融資対象にならないとか、仮に融資が受けられてもその金額が思いのほか低かったりすることになることになるケースがあるからです。

バブルが弾けて、外資系のファンドが日本に進出し、証券化するために信託受益権の取引を行う場合や、現物の所有権取引であっても、バブル期の反省から建物の遵法性(←違反していないこと)を証明するルールを作って、そのための踏み絵的な資料として検査済証が脚光を浴びることになったのです。

その当時、元々大阪は東京などに比べて、検査済証のない建物が多かったので、今まで野球のルールで試合していた人間が、ある日を境にラグビーのルールで試合しろよって感じたくらい我々大阪の不動産業者はかなり戸惑ったものです。

特に、大阪は“車庫転”(シャコテン)といって、建築確認時点では1階を駐車場で申請してから、建物が完成した後に店舗として賃貸すると言った容積率違反の物件が多いと言われています。この場合、駐車場の面積は一定の範囲まで容積率に算入しないという決まりがあるので、建ててから店舗や住居に改装するという方法で違反をするのです。
元々この場合は、賃貸マンションを建てて、将来とも売却する気が無いからこういう方法を取っていたと思うのでが・・・百歩譲って”人間の欲”として許せる部分も感じないではありません。

でも、別のケースですが、私の知っている不動産業者さんの居る分譲マンション内の1階部分の事務所が、建築確認の段階では駐輪場で、マンションが完成してからその駐輪場を事務所に改装して区分所有物件として分譲業者が売却したなんて凄い技を使ったケースもあるそうですが、これは本当に悪質であって全然可愛くありません。

でも、検査済証”が無いと金融機関が絶対に融資しないわけではありません。
一般的に、都市銀行は厳しいですし、地銀、信金、信組、ノンバンクは概ね緩めです。
要は、購入者が金融機関からどのように評価されているのかという問題とか、融資する側からみて融資する必要性があるのかどうかという問題です。

そんな大阪でも”検査済証”の取得率はひと昔は3割程度しか取得されていなかったけれども、近年は8割以上に上昇しているようです。


古い物件の中には、違反性がなく検査済証を取得することに問題ないのにも関らず、わざわざ申請しない建築物もあったくらいでした。
30~40年前、清水建設や大成建設などのスーパーゼネコンの建てたビルなどは、役所の”検査済証”よりも、社内検査を受けて出される“完了書”みたいなものの方が値打ちがあったって言っている人もいました。 また、多くの物件の中には“検査済証”は有なのですが、その後の改装工事や行政による都市計画や用途変更・容積率等の変更によって現状の建物が違法である場合があります。 (既存不適格)
このような既存不適格物件も検査済証はあっても、実際は無いのと同じ扱いなのですが、余程悪質か凄い違反でなければ融資を受ける際の問題は比較的少ないと思っていましたが、最近経験した事例では”検査済証”がないのとほぼ同じでした。
築年数が古くて融資期間が短くなる収益マンションや収益ビルの融資問題を解決するには、売却する金額を下げて、利回りをアップさせて収益力を魅力的にして売る方法を取ることが多いですね。

割り切って購入できて資金調達もできるプロの業者さんは違反性があっても購入していきますが、余程リスクが取れる購入者でないと、一般消費者の方にはお勧めできないと思っています。

「売ってしまえば後はあくまでも買主の問題」だと思っている不動産業者だったら、お構い無しに取引するでしょうが・・・そこは、業者としての姿勢とか信義則の問題かも知れません。

※  検査済証は改めて取り直すことは出来ません。ただ、検査済証という書類を紛失しても、役所で取  得済かどうかの確認やその写しを取ることはできます。
※  設計士などが調査する“住宅診断”や不動産証券化の際に専門の調査会社が行なう“エ ンジニアリングレポート(通称ER)”でも物件の遵法性調査や強度診断、建物の劣化状況 とその修繕費用などが分かるのですが、“検査済証”そのものではありません。

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