不動産ナマ知識/ミスは何故起ったのか!

タカタ・日産・東洋ゴム・そして神戸製鋼と大企業の不祥事が絶えません。なにかが緩んでいるのか、世の中の流れがそうさせているのか、よく判りません。

不祥事も大きなミスも根元は同じところから発しているのではないでしょうか。
そういえばこの前、某証券会社の営業マンが飛び込みでいらっしゃったのですが、すごく軽い感じで一方的にセールスしてくるので、この人「まだまだやなぁ」って思ってしまいました。最近、この手の時代遅れっていうのか、独りよがりのセールスってお目に掛かることが少なくなっていますから、ちょっと驚きました。

“不動産業界でもバブル崩壊後30年近くが経ち、バブル期に未成年だった人でも、今では第一線でバリバリ活躍するようになっています。
あの頃は不動産取引も活発でしたから、ごく普通の営業マンでも取引件数をこなしており、いろいろな取引上の手続やチェックポイントが自然と体験できて、自分のものになるというメリットがありました。
でも最近では取引件数自体も昔よりは少なくなり、ネット上で集客するような営業形態もはびこっていて人との信頼関係も希薄です。
また、権利関係の複雑な物件や大企業のリストラ物件などは入札方式が大流行ですので、仲介業者が買主・売主の間に入って話を纏めてみたり、慎重に物件調査しなければならない案件を自ら経験出来ないままに、バリバリと活躍することにもなってしまうことも多いのかもしれません。
そこで今回は、自分自身の経験を取上げて“ミス”はどういうふうに起り、また防げるのかを考えてみたいと思います。 (当時の関係者の都合もありますので、細部についてはボカシをかけておきました。)

何年も前のことですが、超有名企業のJ社がリストラ対策としての遊休地の処分、大手信託銀行のT社を窓口として買い客を探しておりました。
以前から順調な業績を続けていた社員20名程のS社が倉庫用地として購入を希望し、S社から受け取った『買付証明書』(注1)を提示し、多少のやりとりはありましたがJ社との商談は合意に達しました。
当然、契約前の『売渡承諾書』の提出を求めたのですが、T社担当者は「『売渡承諾書』なんて必要ありませんよ、うちも保証しますし、あのJ社が売るって言っているのですから…」と大手の信用力に押されてそれは諦めて、すぐに“重要事項説明書”や“契約書”の内容を文書化しようと言うことになりました。

それから数日後の夜、私にT社担当者から「どうしても今夜、すぐに会いたい…」旨の電話がありました。
 私ちょうどお風呂に入っていたのですが、「明日じゃダメですか?」と言っても聞いてくれないので、急いで自転車に跨って北浜まで行った次第です。
すると、T社担当者は今回の取引をJ社の都合で断りたいと言うじゃありませんか!
話を聞いてみると売主のJ社担当者(といっても総務部長さん)は、この間まで営業の第一線で活躍していた方で、この間総務部長に配属されて間もないとのことでした。今回の遊休地は30年前に取得したもので、その後土地区画整理事業の後、未利用地となり、減歩により従前の面積より減少したままの状態で、A社としても特別気になる土地でもなかったようです。(注2)
そんな土地をJ社の総務部長さんは自分1人で売却による処理を進めたのでした。
たぶん、このくらいの物件処理なら一人でできるって思ったんでしょうね。
そして、A社部長は従前の面積が書かれた古い登記簿謄本を見つけ、自ら資料を作成してT社担当者へ渡していたのでした。
私は、自分で直近の謄本を取得して実面積は確認済みでしたが、売主側は「坪100万円」とする表現で話を進めていたので総額(=面積×坪単価)が会話の中に出てこなかったのです。
私も坪数間違えるなんてことが、あの超大手J社と信託銀行T社に限って絶対ないと言う暗黙の了解がありましたし、こちらが『売渡承諾書』を希望した時も「うちみたいな大会社がそんなもん必要ない」って偉そうにしてましたから…
ですから、J社部長はT社からの契約書(案)を見たときに飛び上がって驚いたと言うことです。
いくつかのミス、J社総務部長の事務処理能力や実務経験・信託銀行T社担当者のチェックミス・思い込み…過信が重なって起こったケースですが、こうなった以上実情を知ることが出来ない買主は、買うに買えない状況になってしまいました。※売主・信託銀行の方から、買主には売主の都合が変わったので売れなくなったと言って欲しいと懇願されましたので、買主様には悪かったのですが嘘も方便と黙っておいたのです。売主J社は、その部長以外売却できなかった理由も解からないまま、その部長が退職するまでその土地を持ち続けたそうです。
被害者の買主はその後、全く別の物件を購入し、社業は相変わらず順調であります。
買い手側の仲介業者(私ですが…)は、1円の儲けも無く、心の処理をするのに大変時間がかかりました…。

何も知識・経験だけが総てではないけれども、宅建試験に合格しているからといって、不動産のプロになったわけでもありません。勿論、試験には合格しておかないといけませんが… 不動産自体は同じ物が2つとないので、それこそ1件1件がオリジナルの取引となります。
買う人・売る人も十人十色、いや百人百色とすると、不動産屋というのはそれ相当の時間と経験をかけてようやく一人前になれる職業だと思うのです。

ミスはなぜ起こったのか?
大きな会社だって人間一人ひとりの集合体ですから、間違いは起こります。
ましてや、不動産仲介の仕事は会社がするのではなく、大きな会社に勤めていても、担当者個人の能力・経験・判断がすごく重要な仕事だと思いますが、ご理解戴けますでしょうか。

(注1)『買付証明書』と『売渡証明書』
※下記HP「不動産マメ知識コーナー」ご参照下さい
2002.4  売買契約前の重要書類について
(注2)土地区画整理事業

公共施設の整備、宅地の利用増進などを図るために、事業区域内の土地所有者から少しずつ土地を出しあってもらって、事業区内を整然とした区画にする。 そのため、土地所有者の仮換地される面積は従前のものより減少するのが通常であります。これを減歩と呼びます。 単に面積が減るだけなら損失としか考えられないが、整然とした区画の土地の利用価値は従前のものより高まると考えられるので、実際には損失には当らないと考えられる。 また、是正策として精算金などの制度もあり一方的な不利益は避けることができる。

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