全国で“所有者不明の土地”があるとNHKやマスコミでも取り上げています。
“所有者不明の土地”って、「不動産登記簿等にある所有者と、現在の所有者が直ちに判明しない、判明しても連絡がつかない土地」のことで、その総面積は九州よりも広いという推計による発表もありました。
良く似た言葉に、“不在地主”っていうのがありますが、これは「その土地に住んでいない所有者」のことですから、必ずしも何処に居るのか判らないわけではありません。
国土交通省の調査では、日本の総面積3780万ヘクタールの約53%が私有地であって、その内の2割(筆単位)が“所有者不明の土地”ということですから、すごい広さです。
【寄り道】①
土地の個数は、登記簿上で“筆”(1筆とか)という単位で表します。 |
空き家の問題と元は同じです。
どうやら、東日本大震災の被災地の復興事業で、土地の所有者の同意を取るにも“所有者不明の土地”の壁にぶつかり、立ち往生したことがこの問題の表面化に繋がったということらしいけれども、それ以前にも、各地の固定資産税徴収の担当ではある程度は予測できていたと思われます。
国(法務省)も研究会なるものを発足させて、法律的解決策を模索するらしいのですが、そもそも、相続や売買で所有権が変わっても不動産の登記は義務ではなくて、権利です。
固定資産税を払うためにするのでもなく、市役所が所有者を把握するためでもありません。
不動産登記で“所有権の保存”をするのは、他人に私が所有していることを明かすためであって、申請するのは任意(本人任せ)です。
だから、その後、所有者が引越ししても登記上の住所を変更することは必須ではありません。
だから、50年前に死んだお爺ちゃんが住んでいた場所の土地の名義が、去年亡くなったお父さん(息子)から自分(私)に変わっていなくても、それ自体は罰金もお叱りもありません。
ただ、つい10~20年まで、日本って土地神話があって下がらないと皆が思っていたので、田舎の土地でも殆どの人は財産だと思って相続登記していたのでしょうね。
でも、登記費用も要るし、毎年固定資産税も支払わないとダメだし、これからも田舎にも殆ど帰らないし、そもそも売るにしても誰も買ってくれる人が居ないし、資金を引っ張るだけの資産性もなさそうだし・・・そんな人が日本国中にいっぱい居ることが判って、どうしようとしているのが今の状況です。
土地(財産)の値段が下がると、いろいろな問題が派生するものです。最近では、資産価値の低い“不動産”のことを、“負動産”なんて見掛けることもよくあります。
【寄り道】②
私の実家も親が亡くなってから、20年以上土地の名義を変更していませんでしたが、役所の人が調べて長男宛に固定資産税納付の通知書を送ってきていました。 |
土地の価格の二極化は、都会と田舎だけではなく、都市部内でも発生しています。
原因は今まで書いてきたものと同じですが、相続税課税強化と少子化によって都市部の実家の引き取り手に困るケースです。
これは個人的な意見ですが、一昔は長男が実家を継いで、親と同居して暮らしたものでしたが、昨今、たとえご近所であっても親は親、子供は子供で別世帯のところが多いようです。
親が亡くなると、大なり小なり揉めます。
ご近所に住んでいても、親の面倒は見ていたとか、いや、俺は長男だとか言い出すと、揉めます。大きく揉めると、不動産の相続ややっと不動産を売却することに合意したとしても、どこの不動産業者に任せるのかで一騒動し、売却した金額の配分でまた揉めて収拾が付かないなんてこともあります・・・そして、相続登記することなく数年経ちますと、相続人も歳をとりますから…
団塊の世代が80歳を超える2030年以降は、毎年の死亡者数が160万人超とかで、大量の相続が発生する見込みです。
【寄り道】③
“所有者不明の土地”でもなく“不在地主”が税金を払わない族が話題になったことがありました。 納税管理人は、日本で申告が必要な収入(所得税)、日本国内に住所がある場合は住民税、日本の不動産を所有している場合の固定資産税を支払う納税事務処理を行います。 固定資産税については、1月1日現在の不動産所有者に課せられますが、仮に大阪市内に自宅や賃貸不動産を所有して出国して非居住者となる場合は、固定資産税の(大阪市内に住所がある)納付管理人を選任する必要があります。手続きは、不動産の所在地(市区町村)に「納税管理人申告書」を提出します。 |